家中に親父の酒を隠す
僕の親父はのんべい親父です。一度掴んだコップを寝るまでずーーっと手放さないほどお酒が大好きな親父です。お酒をたしなむのでは無く浴びるように飲む親父です。
そんな親父のお酒を家中に隠す任務を母ちゃんと一緒に行っていました。お酒が無くなると、深夜でも「買ってこい」と言われるので、常に4㍑のお酒5~6本をストックしていました。大体、一週間で飲みきってしまいますが。
お酒の隠し場所は母ちゃんと話し合って絶対に見つからない場所に隠します。4㍑のお酒なので重くて大きくて隠すのに一苦労しますが、親父が絶対来ないであろう物置だったり、タンスの中だったり、大きめのバックの中だったり、自分たちでもすっかり忘れるほど家中の至る所に隠しました。後で何気なく掃除をしていると意外な場所からお酒が出てくることもよくありました。
そんなこんなで苦労して隠したお酒ですが、結局お酒を出さないと暴れ出すので、母ちゃんが自ら隠した場所から持ってきます。隠している意味が無いような気もしますが。
母ちゃんが家にいないときは、お酒を出して貰えないので、親父自らがお酒センサーなる嗅覚を駆使して、絶対に見つからない場所に隠しておいたお酒を、見つけ出してしまいます。普段は家にいても何も手伝わない親父ですが、その時だけは目の色を変えて家中お酒を探し回ります。
なんたるお酒への執念。僕は、ムンクの叫びみたいな顔をして毎回驚愕していました!
そして母ちゃんは、隠しておいた場所にお酒が無いことを知り「また、お酒を買いに行かないとダメなのか」とため息を漏らす母ちゃんの小さくなった後ろ姿を毎回見て、寂しい気持ちになりました。